9/9-11 山形

大きなキャリーバックを引いて歩く大学生たちの後に続いて駅の改札を出る。間もなく大学生たちは「合宿免許 生徒の皆さま xxドライビングスクール」と書かれた紙を持った男の周りに集まっていった。2週間もジシャコーに捧げる程の余裕の無い、2泊3日の夏休みの備忘録。

 

9/9(金)

先ず、山形と言えばラーメンでしょう!と意気込み、ケンちゃんラーメンへ。中華そば普通盛をトッピング全部と、濃口/油っぽく/身入りで。ケンちゃんラーメンは数ある山形県内チェーンでもかなりオルタナティヴなラーメンであると感じる。前述の味の濃さ、液体油量の調整、固形脂身の有無のチューニングが可能な点。細切りのメンマ、濃厚な焼き海苔、昔ながらの叉焼、そして何より手打ちのビロビロ中華麺。丼に盛られたこれらを一度に口に頬張った時のしっちゃかめっちゃか感、堪らないものがあった。行列こそ無かったが、ご馳走様と店を後にする客と入れ替わるようにまた新しい客が来て、と繁盛の様子に山形の人々と街のラーメンの深い結び付きを感じた。

続いて、山形県郷土館「文翔館」へ。旧県庁舎、旧県会議事堂であるこの建物が建てられたのは、今から丁度100年前の1916年。歴史あるこの建物では、丁度「山形ビエンナーレ2016」の展示も開催されていた。東北地方は真ん中に奥羽山脈が連なっていて、それを取り囲むように東北の六県が位置していて、さらに山形の内陸部はどこを向いてもその奥に山があって(盆地)、そんな山と東北の切っても切れない関係性を山形で切り開こう、というコンセプトのアートイベントであると(勝手に)感じた。

文翔館からかつてのシネマ旭(山形旭座)方面へ。跡形もなく更地となった後、タイムズの駐車場になったシネマ旭、入り口前の映写機のオブジェが撤去され、居抜きでカラオケボックスになったミューズを眺め、映画館なきシネマ通りを歩いた。道中、ある建物が目に付いた。山形七日町二郵便局という建物。内装はごく普通の郵便局だが、外装の造りに漂う雰囲気に心を奪われてしまった。小さい看板によると、1925年、文翔館と同じく大正時代に建てられた建築だそうだ。文翔館のように街のシンボルとしての大正建築にも、90年を経て郵便局として街に溶け込む形の大正建築も、それぞれが魅力的であると感じた。

 

9/10(土)

山形県朝日町、若宮寺にて開催された寺フェス'16へ。詳細は以下のリンクから。 

citizenpool.hateblo.jp

もし自分が中学生・高校生でこの寺フェスに行っていたら、自分の人生が変わっていたかもしれないな、なんて思ってしまうイベントだった。トップバッターの原田くんからトリの銀杏BOYZまで、そのラインナップの並びはとても自然なもので、そこに意味があって、それぞれが良いライブをして。そのライブを見ている自分も、僕の中の少年に自分自身が飲み込まれてしまうような、そんな瞬間だった。あと、非常に個人的な話になるが、自分が高校生の頃、2008年に山形市でDO ITというライブイベント(会場は前述のシネマ旭)が開催されて。当時行きたい気持ちがありながら、結局なんとなく行かなかったことに対して今までずっと後悔の思いがあって。その後悔が8年経って今回やっと晴れたように感じた。過去とか未来とかじゃなくて、今現在にすべてを注がなきゃ意味が無いな、と思った。

 

9/11(日)

奥羽本線、天童南駅で下車。徒歩2分のイオンモール天童へ。イオンモールは一般的に"紋切り型の"と称されることが多い施設だが、そうは断言出来ない違い・特色があることをここに記したい。施設の造りで言えば、20年前に作られた古くからのイオンモールは天井が低く、館内の通路が直線になっている。一方2年前に開業した天童を始め、近年のイオンモールは天井が高く、館内通路が曲がりくねっている、というような館内を歩いて初めて分かる違いがある。また、出店するテナントにもそれぞれの特色が強い。イオンモール盛岡では2012年、タワーレコードが閉店を発表するも、閉店を惜しむ声と交渉を受けタワーミニ(小型店舗)としての営業継続が決定。今年3月の増床リフレッシュオープンの際に、再度タワーレコードとして開店した。また、青森県つがる市イオンモールでは、アミューズメント施設(ゲーセン)の跡地につがる市図書館が開設するなどの例が挙げられる。今回訪れた天童のイオンモールは外観としては大きく存在感を感じるが、内観は曲がった通路もそうだが、広さを感じさせ過ぎない造りになっているように感じた。今回の訪問は日曜日だったので、圧迫感を感じるほどの館内の混雑だったが、平日の閑散を感じさせない、という点が1つのテーマになっていると感じた。

続いて天童市の「手打 水車生そば」へ。一般的なそば屋さんの店構えであるが、注文したのは「元祖鳥中華」という中華そば。店内の他の客の多くもこの鳥中華を注文し食していた。そば屋由来の和風だしの効いた甘みのあるスープに鶏肉、刻みのり、天かすが浮かぶ。丼の底から掬い上げる黄色く縮れた中華麺、これがまた美味しい。一般的な醤油ラーメンからはかけ離れているのだけれど、癖になるドメスティックな美味しさの中華そばだった。

水車そばから天童駅へ歩く道中、コンビニエンスストアで単三電池を購入。天童駅に着き、ホームのベンチに座り電車を待つ。前日の寺フェスの出店で購入したポータブルのカセットプレイヤーに単三電池とオマケで貰ったカセットテープを収めた。再生ボタンを押す。リズムボックスのビート、レゲエの風を感じるベースライン、艶やかな歌声。新しい音楽と出会った瞬間の、その新しさが自分の中に染み込んでいく感覚と、その出会いが自分の意思ではなく、店主の偶然のレコメンドだったことの嬉しさと、そんな思いを交錯させながら、イヤホンから流れる音楽に耳を傾けた。間もなく山形行きの普通電車がホームに到着した。

 

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