#20171116 Takadanobaba

 高田馬場のラーメン屋に入る。食券を店員に渡し、カウンター席に座った後、スマートフォンでニュースサイトを眺めていた。紅白歌合戦の出場歌手発表のニュース、M-1グランプリの決勝出場者発表のニュースがあった。そしてそのどちらの番組にも出演者として発表されていなかった"にゃんこスター"になぜか思いを馳せていた。「この動きを求めている俺がいる」という言葉に、テレビの中で行われているお祭りに夢中になっていた自分自身を指摘されたような気持ちになり、我に返りながら笑ってしまった瞬間を思い出していた。程なくして、ラーメンの丼がカウンターのテーブルに届けられた。乗せ放題のネギを黒いスープに浮かべる。麺を啜りながら、恵比寿リキッドルームで行われたトリプルファイヤーのワンマンライブを反芻していた。

 開演を知らせるブザーが鳴り、ステージの幕が開く。上手から山本慶幸(Ba)、大垣翔(Dr)、鳥居真道(Gt)、シマダボーイ(Perc)が登壇し、客席の歓声で迎えられる。酒が入ったプラカップを片手に吉田靖直(Vo)が登場すると客席から笑いが起きた。吉田は足元にプラカップを置いた後、ズボンの尻ポケットに収まっていた烏龍ハイの缶を2本取り出し、並べて置いた。ライブの1曲目は大垣の4カウントから「SEXはダサい」が演奏された。曲間のMCで吉田が「東京インディーズの重要人物」と紹介したサポート・パーカッションのシマダボーイ。彼のパーカッションが入ることで過去の曲の多くが様々な音色のリズムで彩られた。その最たる曲となった「Jimi Hendrix Experience」では、曲全体にラテンのリズムに合わせたアレンジが施されていた。さらにサポートメンバーとして遊佐春菜(Key / 壊れかけのテープレコーダーズ)を迎えると、新しいアルバム「FIRE」より「銀行に行った日」「人生を変える言葉」などの楽曲が披露された。ライブ中盤、サポートメンバーの2人がステージを降りると、「ここからはオリジナルメンバーで演奏したいと思います、…『オリジナルメンバー』って初めて言ったかもしれない」という独特の間を持った吉田のMCが観客を沸かせた。その後「エキサイティングフラッシュ」「次やったら殴る」「はずれのヘルス嬢」「じじいの同窓会」など新旧様々な楽曲が4人編成で矢継ぎ早に演奏された。再びシマダボーイがステージに登場すると、ゲームソフトに着想を得た歌詞という点で共通している「コインとキノコ」と「サクセス」の2曲が続けて披露された。また、キーボードの遊佐を再度ステージに迎え、6人編成で「漁師の手」「有名な病気」が演奏された。そして「野球選手になるために」。吉田のリズムに合わせた細切れのボーカル、鳥居のミニマルなギターリフ、山本のファンクネスなベース、大垣の転調で刻まれる16分のハイハット、シマダボーイの裏でリズムを刻むカウベル。トリプルファイヤーの楽曲が持つ異質な雰囲気をより一歩先に発展させた演奏だった。その後、「『カモン』…『行くよ』…『カモン』…『行くよ』」とアメリカン・ポルノを彷彿させる歌詞のアレンジが施された「カモン」、「こだわる男」でライブ本編を締めくくり、アンコールでは「スキルアップ」「普通は走り出す」が披露され、ライブの幕が閉じられた。