#20171118 Shin-Okubo

 新宿のディスクユニオンを後にして、新大久保に向かって歩いていく。道中、靖国通りの横断歩道で熊手を持った人たちとすれ違った。そういえば、と東の方に目を向けると、軒を連ねる屋台の露店。酉の市が行われている花園神社の周辺は多くの人でごった返していた。

 折角の機会なので熊手を売る露店を覗いてみよう、と花園神社の中へ入っていった。入口直ぐの場所で、法被を羽織り声を張り上げて呼び込みをする女性の姿が。カッパ御殿という看板が掛かった小屋があり、その中ではショウが行われていた。客席は満員御礼で、中に入れなかった人たちが会場の周りにひしめき合っていた。

 熊手を売る露店が並ぶエリアへ入る。煌びやかさを放つ大小様々な熊手と、それを売る屋台の鉄パイプ・トタン・ブルーシートとのコントラストに頭がクラクラしそうになった。奥へ進むと、旧年の熊手を納めるスペースがあった。山のように積み上げられた熊手の様子も、また圧巻だった。

 途中で寄り道をしたものの、会場となるカフェアリエには開場時刻ちょうどに着くことが出来た。しっかりとした造りのテーブル、コースターの上には緑色の瓶ビールが置かれている。暫くの後、電球色のスタンドライトを1本残して、店内の照明は消灯した。VoxのギターアンプGibsonエレアコ、幾つかのエフェクター、ボーカルアウトのスピーカー。颯然とSho Takahashiのライブが始まった。

 ライブの1曲目は「恋人たち」。会場の空気を確かめるように、そしてその空気を少しずつ変化させていくように演奏された。2曲目に披露されたのは「太陽さん」。ボーカルの歌唱とギターの弾奏のギアを大きく上げたその演奏は、行き場のないブルースがこの空間で爆発したような印象を強く感じさせた。

 全部で15曲ほどの楽曲が演奏されたライブとなった。今年リリースされた自主盤「NZM」の曲と、昆虫キッズの曲と、半々の割合だった。ゆっくりとしたテンポのアレンジで演奏された「ASTRA」は、歌詞の一節一節を噛み締めるように歌われた。また、カバーで披露された「と、いう話さ」はアルバム「Too many people」に込められたASKAの魂に胸を借りるような演奏だった。

 ライブが終わり、帰路に着く。冬の訪れを感じさせる冷たい風が身体を刺した。「初っぱなのMCで縁起でもないこと言われちゃったしな…」と振り返り、雑司が谷駅で途中下車をした。既にあとの祭りの雰囲気が漂っていた大鳥神社でお参りをした後、三本締めの掛け声を遠くに聞きながら、家へ帰った。