#20171214 Shinkiba

 新木場スタジオコーストにて開催された、スピッツとVINTAGE ROCKが共催するライブイベント「新木場サンセット2017」へ。例年7月〜9月の夏フェスシーズンに開催されていた本イベントだが、今年はバンド結成30周年を記念した全国ツアーがあったため、初めて12月の冬開催となった。日没の時刻はとうに過ぎた12月14日の18時、新木場サンセット2017の2日目が開演した。

 1番手、スタジオコーストのメインステージである8823ステージに登場したのはTHE COLLECTORS。古沢"cozi"岳之による力強いドラムのビートの勢いに乗って「東京虫バグズ」「MILLION CROSSROADS ROCK」が演奏される。続けて「TOUGH」が披露された後、ボーカルの加藤ひさしは「オープニングアクトザ・コレクターズです!」と観客に挨拶し、新木場サンセット"常連"として毎年呼んでもらうスピッツに感謝の思いを述べた。新譜「Roll Up The Collectors」の楽曲「ロマンチック・プラネット」の演奏を終えた後、加藤は「去年の新木場サンセットに来たって人、どれ位いる?」と観客に挙手を促すと、挙がった数の多さに「こりゃあ、バックれられないな…」とバツが悪い表情で呟いた。「去年のMCで、スピッツは自分のイベントなのに『ロビンソン』をやらない、という話になって。じゃあ代わりにザ・コレクターズが『ロビンソン』を歌おうじゃないか!という約束を去年ここでしまして、」「さっきリハで歌ってたらマサムネ君に2番の歌詞が間違ってるって指摘されちゃって…みんなスピッツのファンだから歌ってくれるよね?よろしく頼むよ!」というMCの後、「ロビンソン」のカバーが披露された。ザ・コレクターズの楽曲の演奏とは打って変わって、古市コータローは手元をじっと見つめながら丁寧にギターのアルペジオを奏でた。そして「希望の舟」の後に披露されたのは、活動初期の楽曲「NICK! NICK! NICK!」。ストレートなロックナンバーであるこの楽曲の演奏に、30年超のキャリアを重ねるザ・コレクターズの今なお古びることのない初期衝動があった。最後に「ノビシロマックス」が演奏され、ザ・コレクターズの4人はステージを後にした。

 メインの8823ステージの下手側フロア奥にある3373ステージ。ザ・コレクターズの終演から間を空けず、お揃いのピンクの衣装に身を包んだ4人組、CHAIが登場した。1曲目に演奏されたのは「Sound & Stomach」。ユナによるドラムの出音の割合が大きい独特なサウンドプロダクションに、ポストパンクを彷彿とさせる格好良さがあった。ドスの効いた声でキーボードのマナがラップを繰り出した「ヴィレヴァンの」の後には、マドンナの楽曲「Material Girl」の替え歌に乗せて、1stアルバム「PINK」の宣伝が行われた。その後「トム・クルーズに壁ドンされたい!バット、ハンサム・ボーイ・イズ・バッド・ボーイ!」というマナの発言をベースのユウキが戸田奈津子よろしく日本語に翻訳するMCから「ボーイズ・セコ・メン」、そして「N.E.O.」が披露された。「おい!ヒゲとメガネ!お前らちゃんとやってないの見えてるぞ!」と観客全員のブーイングを促した後に「ぎゃらんぶー」、最後に「sayonara complex」が演奏され、CHAIのライブが終演した。

 続けて、ホラ貝の音色をSEにステージの幕が開いたレキシ。ホーンセクションを含む総勢6名のサポートメンバーはステージ中央の池田貴史を囲むように半楕円状に一列に並んでいる。公式グッズである稲穂のレプリカを意気揚々と掲げて振る観客に対し、池田は「まだその曲じゃないから!きっと後で自由に稲も振れるはずだから!収めてください」と制した。「大きな力で〜(ロビンソン) イベントに呼んでいただきました、レキシです!よろしくお願いします!」と1曲目に披露されたのは「きらきら武士」。観客が腕を挙げて左右に動かすハンドウェーブが会場の一体感を生み出した。続く「KATOKU」では、楽曲のキメに合わせて池田が振り向く様子に、観客の黄色い歓声が上がった。そして、池田は衣装である着物の上に重ねて十二単を羽織り「SHIKIBU」が披露された。最後に演奏されたのは「狩りから稲作へ」。曲中、スピッツの「涙がキラリ☆」の稲穂バージョンの替え歌も織り交ぜられ、フロアに数多くの稲穂が枝垂れる中、レキシのライブが幕を閉じた。

 「2016年4月22日振りの皆さん、こんばんは、スカートです」とギターボーカル澤部のMCからスカートのライブが始まった。1曲目は「ストーリー」。後のMCで、直前に出演したレキシと自分たちを比較して、「エンタメには生真面目で立ち向かうしかない」と冗談交じりに澤部は語った。その発言を体現するように、端正なポップスを丁寧に演奏していくライブになった。新譜「20/20」から「さよなら!さよなら!」と「視界良好」が披露される。「不思議な縁がありまして、『みなと』のレコーディングに口笛で参加させて頂いて、ミュージックステーションに一緒に出させてもらって、そして今日、このイベントに呼んで頂いて、感謝しかないです」とスカート・澤部渡のスピッツとの関わりに対する感謝の思いが語られた。そしてドラマ「山田孝之のカンヌ映画祭」のエンディングテーマとなった「ランプトン」と「CALL」、「すみか」が続けて演奏された。「mitsume」とデザインされたタオルで汗を拭った後、来年の3月に渋谷クラブクアトロにて開催されるワンマンライブの告知が行われた。その後に演奏されたのは「回想」。清水のグルーヴを醸し出すベースに、佐久間のドラムハイハットとシマダボーイのパーカッションが裏で刻むリズム。佐藤によるメロウなキーボードが演出する楽曲のムードに乗せて、澤部はギターのカッティングを刻みながら、ファンクネスな譜割りで歌唱した。そして最後に「静かな夜がいい」が演奏され、スカートはステージを降りた。

 転換を終えたステージの幕が開き、スピッツのライブが始まった。1曲目は「死神の岬へ」。本曲が収められた1stアルバム「スピッツ」のジャケットと同じく、青色の照明にメンバーは照らされた。続けて披露された「みそか」。2ビートで曲が勢いづくサビに展開すると、ベースの田村は飛び跳ね、ステージを駆け回りながらの演奏を見せた。MCでは、今日の新木場サンセットに出演した4組への感謝と、それぞれのアーティストに対する思い入れが語られた。また、ザ・コレクターズが「ロビンソン」をカバーした際、加藤が「スピッツの曲はキーが高い」と発言したことに対し、マサムネは「コレクターズも結構キーが高いんだよ」と話し、ザ・コレクターズの「青春ミラー」の一節をアカペラでカバーする一幕もあった。多くの観客が飛び跳ねる盛り上がりを見せた「野生のポルカ」と「歩きだせ、クローバー」の演奏を終えると、「最近やっていなかったから」とメンバー紹介が行われた。「今日誕生日です、おめでとう」と紹介されたサポート・キーボーティスト、クジヒロコは、「お気づきでしょうか、ピンクの衣装。30年前なら私もCHAIに入れたかな?」と軽妙なジョークで会場を温めた。アルバム「醒めない」の収録曲「子グマ!子グマ!」に続けて披露されたのは、ポルノグラフィティの楽曲「アポロ」のカバー。演奏を終えると、「昨日のライブ(新木場サンセット1日目)の後、気付いたんだけど、自分たちが正直に歌うなら『僕らの生まれてきた ほんのちょっと後だけど』なんだよね」「1969年だからね」とマサムネとテツヤによる冷静なツッコミが入れられた。そして、崎山のドラムスティックの4カウントから「三日月ロック その3」と「8823」に続けて、ライブ本編の最後に演奏されたのは、今年発売された30周年ベスト盤に収められた新曲「1987→」。バンドが結成された頃の初心に立ち返った気持ちで製作されたこの楽曲の演奏には、30年のキャリアを経てもなおスピッツが放ち続けるフレッシュな爽やかさがあった。

 アンコール。観客の拍手に応えてステージに登場したメンバーの手には、レキシのグッズ、稲穂のレプリカがあった。その様子に応えるように観客は稲穂を掲げた。マサムネは稲穂を手に「Aメロは横にこう揺らして、サビは前後にこう、ね」と観客にノり方を指南した後に、演奏されたのは「稲穂」。フロアに揺れる多くの稲穂は、橙色の照明に照らされた。最後に「稲穂」がカップリングとして収められたシングルの表題曲「さわって・変わって」が演奏され、スピッツのライブは幕を閉じた。ライブ終演後、稲穂やドラムスティックをフロアの観客に投げ込むメンバー。マサムネがギターピックを投げると、フロア中央にいた自分の方向へ飛んできた。思わず腕を伸ばすと、ピックは自分のちょうど手の平の中へ。しかし、勢いよく飛んできたピックは、そのまま自分の手の平を弾いて、フロアの人混みの中へ消えてしまった。運良く飛んできたピックをキャッチ出来なかった自分の運動神経の無さを少しだけ恨みながら、帰路に着いた。