年の終わりの纏めとて (2017)

 JR中央線各駅停車、千駄ヶ谷駅信濃町駅の間、一瞬だけ南側の車窓から、建設中の新国立競技場が見える瞬間がある。夏の頃は赤と白のクレーンが数多く屹立している様子が印象的だったが、いよいよスタジアムの客席部分も2階、3階、4階と組み上がってきた。ただ、この工事現場を眺めるたびに思いを馳せるのは、2年半後の未来ではなく、今年7月の報道、工事の現場監督を任された23歳の新入社員が自らの命を絶ったというニュースだ。生きていた頃の彼の心境を察して、自分の心も押しつぶされそうな気持ちになった。生き続けていて欲しかった。

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 12月20日、ミツメ「エスパー」の7inchを探し求めて、関東近郊を駆け回る。大宮から柏へ向かうため、東武野田線に初めて乗車した。春日部駅、電車の窓の外にあった匠大塚とサトーココノカドーの看板に少しだけ胸が躍った。関東近郊のディスクユニオンには、レコードを持っていた人の暮らしの欠片の感じがより濃く出ているように感じる。自宅のレコード棚からひとつかみで売りに来た、そのイメージが浮かび上がった。その後千代田線を経由して下北沢、原宿、渋谷とレコード店を巡るもなしのつぶて。結局「エスパー」の7inchは手に入れられなかったものの、色々なお店を巡りレコードを掘って楽しかったから良いか、と思った。

 渋谷クラブクアトロにて開催された、どついたるねんの無料ワンマンライブへ。小林4000とファック松本の脱退の一件があって、正直冷静な気持ちでライブを見ることは出来なかったのだけれど、ワトソンの変わらないギラギラした眼差しを見て、笑って、少しだけ安心した。物販で買ったワトソンwithチーム蟹工船のライブ音源がとても良い。年間ベストディスク。

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 乗車率100%超の新幹線で1000%SKYのアルバムを聴く。藤村頼正(シャムキャッツ)のドラムは青空を押し広げていくように力強く、言い得て妙のバンド名だと思う。カーステレオで聴きたい一枚。2018年は車を買いたい。いっそレンタカーでもいい、遠くへ行きたい。

 新幹線を降りる。中学・高校の6年間を暮らした街の駅前の風景が広がっている。大学生の頃、この街に帰省した時、CDショップの試聴機で展開されていたスカートの「エス・オー・エス」を購入したことを思い出した。そのCDショップへ入る。ぐるりと店内を一周して、直ぐに店を出た。雪が舞う空を見上げながら、実家へ向かった。